2008年07月04日

あ!カルメンが歌詞、間違えた?!

チューリッヒ歌劇場の今シーズン最後の新演出、
ヴェッセリーナ・カサロヴァの「カルメン」。
観て参りました。目

幕が開くと、無意味に中央プロンプターの位置に犬を配した、簡素・・・というか、ちょっとチープな舞台に、SBB(スイスの国鉄)職員を
模したような、軍隊にはとても見えない、平和、且つ、現代風(?)な
制服を着た男たちが、ずら〜り。

眼鏡をかけた気の弱そうなドン・ホセを演じるのは、
ヨナス・カウフマン眼鏡

地味〜な短いワンピースにハイヒール・サンダルという格好で、
いささか不安定そうに歩きまわりながらハバネラを歌うカサロヴァ

なんか、カルメンのイメージと違う・・・。

それがカサロヴァのせいなのか、演出のせいなのか、決めかねていた第2幕。
登場したのは、田舎の農夫と見まごう、
モッサリ体型エスカミーリョ
「闘牛士の歌」の最中にジョッキビールを一気飲みするのが妙〜に
ハマっていた。(ただし声はべらぼうに良!)
しかも彼だけ衣裳が、時代錯誤。

やっぱりこの演出、なんか

リリャス・パスティアの酒場でカルメンがドン・ホセのために歌って、
踊ってあげる場面はカルメンの手のみにスポットライト。

これってカサロヴァちゃんが、踊りが苦手なせい?

・・・それなりに良いけど、何となくツボにはまらない、
見ていて落着きが悪い舞台。
「ブラボー」が言いたい観客たちも、いまいち乗り切れない
そんな
雰囲気が漂った、
その瞬間。

始まったんです。

ヨナス・カウフマンの「花の歌」。揺れるハート

切々とカルメンに恋心を訴える歌。もちろん歴代テノールたちが
こぞって歌ってきた、名曲です。

しかーし

こんなにも切なく、涙を誘う名演は、未だかつて、
あったでしょうか!!
頭の血管が切れそうなほどの激情がほとばしる  (フォルテ)から、
触れなば落ちん、ガラス細工のような、繊細きわまる、
鳥肌ものの pp (ピアニッシモ)まで、
こんなにも自在にコントロールしてのけるドン・ホセを、
私は聴いたことがありません。
口を半開きにしたまま聴き入ったのち、まさに劇場中が揺れるような、嵐のような拍手が沸き起こりました。ぴかぴか(新しい)

オーケストラボックスで弾いていた友人曰く


「カウフマンが歌っているとき、劇場中が5cmは前のめりになっていた」

今まで不完全燃焼だった観客が、待ってましたとばかりに
「ブラボー」を叫んでおりました。
主役はカルメンなのに、ちょっと可哀そう。。。

それで「ちぇ」と気抜けしたのかどうかはともかく、
第4幕。最終場面。
カルメンとカルメンに捨てられたドン・ホセの対決シーン。
緊迫した音楽が盛り上がって最高潮に達したとき、
物陰(今回は木陰)から現れるドン・ホセ。

カルメン:「あんたね(C'est toi)?」
ドンホセ:「おれだよ(C'est moi)。」

となるはずのシーン。
ところがカサロヴァちゃん、なんと大間違い!!

カルメン:「あたし(C'est moi)?」

と歌ってしまったんですー!爆弾
やっちゃいましたねー。

カサロヴァもカウフマンも何事もなかったように続けてましたけど、
よくあそこでふき出さずに歌えるもんだ、と妙なところで
感心してしまいました。わーい(嬉しい顔)

そして、最後の最後、カーテンコール。
主要出演者全員が登場して手をつなぎ、観客の拍手に
お辞儀して応えている・・・

けど、あれ?

カルメンがいない?

そう、カサロヴァの姿がありませんでした。
出来が不満で出てこなかったのか、出損ねちゃったのか、
ともかくこの日、カサロヴァは何だかちょっと、
おかしかったみたいです。
プロったって人間ですもの、いろいろあるんでしょうねえ。
posted by Duo A&K at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ビゼー・オペラ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック
×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がない ブログに表示されております。