もう一人、忘れてならないのはドンナ・エルヴィラ。
ドン・ジョバンニのかつての奥方で、
未だにジョバンニを忘れられないくせに、
彼を懲らしめ、悪行を断ち切らせるために、
ジョバンニの行くところ、あちこち追いかけまわしている、
・・・それってストーカーじゃないですか

歌ったのはオーストリア出身のマーリン・ハルテリウス。
プロフィールのお写真は、美しい歯並びを見せて微笑んでおり、
いささか練り歯磨きの広告のようではありますが、
結構美人です。
というか舞台姿がお美しい。

それに絶対ノリもいい。
以前モーツァルトの「フィガロの結婚」で、
彼女の伯爵夫人を観ましたが、
侍女スザンナのふりをして、伯爵の浮気をやり込めるシーンでも、
ウキウキ気分の伯爵に負けず劣らず、イケイケのノリノリで、
サタデーナイトフィーバー

今回もツェルリーナの結婚式で、全員が一斉に踊る場面で
(文字では「踊る」としか表現のしようがないけど、本当は
エキストラも歌手も、やっていたのは全員同じ、
ケッタイな「動き」。お見せできなくて残念)
彼女のダンスはひときわノリが良かったように思われます

そしてなにより肝心の、歌が巧い

ジョバンニに裏切られ、復讐を誓いつつも踏み切れない、という
複雑骨折したエルヴィラの相反する感情を、
なんとも細やかに表現なさっておいででした。
音楽的にも説得力があり、結構鳥肌ものでした

今月末にはチャイコフスキーの「エフゲニー・オネーギン」の
タチアナ役で役デビューをするようです。
ドンナ・アンナを歌ったモシュクの透明な声とは対照的に
くぐもったような声ながら、決して暗くなく、
ビロードのような声質なので、タチアナもさぞかし似合うでしょう。
残念ながら日程的に私は観にいけませんが、
このハルテリウス、今後も大いに注目したいと思います

お次はツェルリーナ。
あらゆるオペラの中でもひときわ尻軽な村娘。
恋人マゼットとの結婚式のド最中に、
ドン・ジョバンニに口説かれて、ついて行こうとしてしまう。
いけないお嬢さんですね

歌ったのはラウラ・ジョルダーノ。
聞いたことない名前だと思ったら、
まだデビューして間もない歌手のようでした。
イタリアはパレルモ出身の、これまた、結構な美人。
いかにもスーブレット(女中役)が似合いそうな
軽やかで可愛らしい声で、芝居気たっぷりのレチタティーヴォは
大変魅力的でした。
が。
肝心のアリアが、声が細すぎるし、音程がふらつくし、
ちょっと残念でした。
まだ大変お若い方のようですから、先日のルーベン・ドローレ同様、
今後の成長に期待したいと思います。