今シーズン最終演目の「椿姫」を
観てまいりました
演目看板はヴィオレッタ役ナタリー・デセイ
現代最高の呼び声高いこの歌手を、
私はまだ、聴いた事が無かったのです。
もともと女優さんだった事もあって、
演技も素晴らしいという
評判を耳にしてましたし、
なにしろ美人だし(←これ結構重要)
彼女のヴィオレッタなら、
映画でも存分に泣けるに違いない
期待ムンムンでした
第1幕、既に幕の上がった舞台は、
カーブした白い壁と壁に沿った白いベンチに
人間より大きな文字盤の大きな時計が一つ。
微妙に音程の悪いヴァイオリンがいささか気になる序曲中、
ドアになっている左側の壁の一部から
真っ赤なドレス姿のヴィオレッタがヨロヨロと登場しました。
板付きで反対側のベンチに座っていた、
黒トレンチ姿のおじさんを見ると怯え出し、
やがて手を差し伸べて近づいていきます。
ヴィオレッタの一連の動きから察するに、
このおじさんって・・・。
私はてっきり、役柄としては存在しないけど、
病に冒されたヴィオレッタだけに見える
死の象徴のような役、だとばかり思っていました。
なので、第3幕でいきなり(?)歌いだしたときは、
大変、びっくりしたものです。
実はグランヴィル医師だったんですよね。
だったら、なんで1幕からそこにいるのさっ。
でもねえ。
この死神設定(だから、違うってば。)の演出の故なのか、
デセイの演技の故なのか、良く分かりませんが、
確かにヴィオレッタは、最初から病に冒されていて、
今にも訪れるであろう死に内心で怯え、
その恐怖から逃れるために享楽的で自堕落な生活を
送っている、という設定なんですが。。
怯えてヨロヨロしている、感が強すぎて、
驕慢な感じが出ておらず、
アルフレードと恋に落ちた瞬間なんかも、
あまり楽しくなさそう。(余計なお世話)
おかげであの、ヴェルディの、甘〜〜いメロディーが
甘く聴こえないんですよね。
続く、第2幕第1場でも、パパジェルモンに説得されて、
悲しみのあまり、ヨロヨロ・・・
第2幕第2場、アルフレードに手酷く侮辱されて
ショックのあまり、ここでもヨロヨロ・・・
さらに第3幕、なかなか来ないアルフレードを待ちわびる
ヴィオレッタは、病のせいでやっぱりヨロヨロ・・・
最初から最後までずっとヨロヨロしてるだけ、
という印象でした。
この人、これで、本当に、元女優なのか・・・?
おまけに・・・声も絶不調だったようで。
第1幕からなんだか調子が悪そうで、
音程は外しまくるわ、声に艶が無いわ・・・
アップになった時の、深く刻まれたシワ、と相まって
(いや、シワ、はオペラとはなんの関係も無いのですが)
だ、大丈夫なんだろうか?
と思うほど、ガッサガサの声でした。
第1幕後の幕間インタビューで
「ごめんなさ〜い高音、外したわ〜」
と自己申告なさっていましたから、
自覚も十分にあったものと思われます。
(このあっけらかんとしたキャラは、
実にいい味出してました個人的には大変好きだ)
ヴィオレッタ役というのは、幕によって、
別人の役か?と思うくらい、
全く違う要素を出さなくてはいけないのが大変なのだそうで
インタビュアーのソプラノ歌手デボラ・ヴォイト曰く、
「本当に大変よね〜。だから、私は歌わないのよ。」
だそうですが。(このキャラも、いいなあ)
もっとも、デセイほどの歌手であれば、
こなせない役ではない、と思うのですが・・・
残念な感じは幕が進むにつれてどんどん悪化していきました。
どう見ても、調子が悪かった、と思います。
特に胸声音域が辛そうでしたが、
ppにしようとすると声が掠れてしまうので、
押し切ろうとして音量を上げざるを得なくなり、
結局ずっとmfになってしまう。
ppが使えないから、張りつめたような緊張感も、
揺れ動く女心の繊細さも、全然無く、
声の色も、表情も、変化に乏しく、むしろガサツな印象。
おまけに演技も、ずっとヨロヨロしてるだけ・・・?
正直、彼女の歌だけだったら、途中で帰ろうかな?
と思ったほど、退屈でツラかったです。。
期待していただけに、ちょっと以上かなり未満、
これは、衝撃でした。。。
しかも指揮とも、しょっちゅうズレズレになるんですよね。
今、完全に半拍ズレてるんだけど、しかも全然戻れないでいるけど、
大丈夫か、修正できるのか・・・?
と心配になったのが、一度や二度ではなかったし。。
声質も、一人、異質で、
変な意味で浮き出ているように聴こえました。
アルフレードとパパジェルモンが、二人とも
体格もガッシリしていて、豊かで広やかな声だっただけに、
この二人に挟まれた時、
追いつめられた女の苦しみを表現する、というより
必死でがなりたてて騒いでいるだけ、に見え・・・
でも、これは・・・どうなんでしょうか?
今回の印象は、デセイの歌い方云々、というよりは、
やっぱり、調子が絶望的に悪かったせい、ではないのか、
という気がしてしまうのですが。。。
詳しい事は存じませんが、彼女は今までに、
大きな喉の手術を2度もやっている、とのこと。
もしや再発したのでは・・・?
と、いささかよけいな心配をして、います。
だけど、だったら、キャンセルすればよかったのに、ねえ。。
全世界に大々的に、
「デセイの椿姫映画館でも上映」
と宣伝されてしまった手前、休めなかったのだろうか・・・。
なんぞと、勝手に妄想していたのですが。
調子のよいデセイを、是非一度、聴いてみたいものです。
ま、でも、とりあえず。
秋に来日して、演奏会形式でドニゼッティの
ランメルモールのルチアを歌うそうですが、
(確か)27000円(S席)も払ったりは、しないな、
と思ったことでした。
(続く)
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